「すぐやる課」
出典元、松戸市が開設した困りごと即応組織。主語がない課。
「すぐやる課」は、1969年に松戸市で、松本清というドラッグストアみたいな名前の市長に生み出された。役所といえば「生活安心課」だの「商工振興課」だの、必要ではあるもののお堅いイメージから抜け出せない中、「すぐやる課」は名前からしてやる気が感じられ、発足当時は大変話題になったらしい。まあ、ダジャレっぽいネーミングな事も大きく影響していたのだろうが。
もちろん業務内容は名前の通り「すぐやる」、課である。市民から困った事の連絡を受けたらすぐに飛んで行って解決するらしい。公共設備の破損などの土木関係、蜂の巣の駆除などの動物関係が多いそうだ。確かに通常のイメージで役所に連絡した方がいい案件だし、普通は電話したら3日以内に処理しに来てくれる、ところを「すぐやる課」ならもう、すぐに飛んで来て対応してくれるのだろう。ただまあ、どのくらいすぐやるのかは不明である。評判は悪くないのでちゃんとやっているのだろうが、就業時間ギリギリに時間が掛かりそうで人手も要りそうな案件が来たらどうしているのだろうか。「明日、すぐやります」なのかもしれないしそれも仕方ない。まあ「明日、すぐ」も「すぐ」のうちなのでそれはそれで嘘ではないが。案件が大量に来たらどうするのだろうか。課の規模が案外小さそうなので、もしかしたら思ったより細々とやっているのかもしれない。大事なのは姿勢である。
……姿勢が大事だし、その姿勢を見せている事が大事なので松戸市の「すぐやる課」が話題になって以降、全国に広まったらしい。もちろん、「元からすぐやってよ」の声もあるというが、だから姿勢なので、「そういうところもありましたが今後はこういうつもりで頑張りますので」という話なのだろう。当時、と言っても50年も前なのでかなり昔だが、全国の役所に増え、またドラマなどでもブームになって認知度がかなり上がったという。ドラマの影響で役所に課が新設される、というエピソードも凄いしそんなんでいいのか、とも思うが、使えるものはなんでも使う、といった考え方もあるしそれはそれでアリかもしれない。
一度、松戸市の「すぐやる課」は閉鎖する事も検討されたらしい。それは「やってらんねーよ」的な話ではなく、松戸市のどの課もそういった市民からの報告にはすぐやる体勢が定着し、あえて専門の「すぐやる課」を起ち上げておかなくても対応出来る様になった、という理由かららしい。まあそれはさすがに嘘くさいが、確かに「蜂の駆除課」的なところがあってすぐやる体勢になっているのなら、敢えて「すぐやる課」にお願いしてやってもらう必要もない、そういう事なのだろう。しかし結局松戸市としては、発祥の地なので……という理由でそのまま存続し、現在に到る。
まあ、……全体的に、”凄いと見せかけた罠で普通のエピソード”な感じもするが、役所にしては凄い、という受け止め方が正しいのだろうか。頑張った努力を評価しないのも冷たいが、その程度の努力は普通、と思うのも自由である。以下が「すぐやる課」のモットーだそうで。
「すぐやらなければならないもので、すぐやり得るものは、すぐにやります」
いや、分かってるし。