「あなた疲れてるのよ」
出典元、ドラマ「Xファイル」より、スカリーのセリフ。だから休んだ方がいいわよ、以外の意味も含んでいる。
ここだけ取り上げると非常によく聞くセリフに見える。「Xファイル」においては、主に
「モルダー、あなた疲れてるのよ」
という形で使われる。が、「モルダー、」を抜くと非常に汎用性の高いセリフとなる。「Xファイル」は超常現象を題材にしたドラマだが、そもそも超常現象や人外の化け物を題材としたフィクション作品は、世に無数に存在しているからである。
現実世界を舞台とし、超常現象が”有り”の物語を扱う場合、見せていく順序というのはある程度決まって来る。まず世間一般の人は超常現象を知らず、”ない”ものと認識している。それから突如、超常現象が起こり、被害者などが出て視聴者はそれがこの物語世界上では存在するという事なんだな、と知らされる。その後、主人公などがまずその世界内で初めてその現象に気付く。そしてそれを周りの人に知らせるが、あまりにも突飛な話のため、信じてもらえない。ここでしつこく食い下がると周りの理解度が下がっていくため、効果が高い。そしてその時、言われるのに最適なセリフがこれである。
「あなた疲れてるのよ」
疲れていて、判断がおかしくなり、あるはずのないものを見たと言っているんだね、の意。
しかしまたテンプレート化したやり取りとも言える。結局ストーリーは進み、超常現象はその世界の住人に周知の事実となり、初めに主人公の言っていた事が疲れて見た幻覚などではなく、真実である事が判明する。ありきたりのパターンである。とはいえ、主人公が気付いた直後に周りの人や警察があっさりと信じてくれて、治安部隊が出動となっていたりすると成り立たない物語はおそらく多い。信じてもらえないところも含めて、視聴者に与える”あとで解放されるストレス”の役割を果たしているのだろう。超常現象を多数の人間で確認し、「ほら見ろ」と思うのは主人公だけでなく視聴者もだからである。
問題は言い回しだろうか。日常生活において「お前、疲れてるんだよ」というセリフを聞く事はまずない。洋画や海外ドラマ特有の言い回しの様な気もするが、しかし日本のドラマにおいても使われている気がする。現実世界では、突然変な事を言い出した同僚がいたら、このセリフは使われず、スルーされるか、こっそりほかの人と噂話にされるのが関の山である。むしろ現実で「お前、疲れてるんだよ」と言ってあげるとギャグに聞こえるので、言って笑わせてあげるのが優しさか。当人同士の関係性が大きく関わって来るのだろう。ただし現代日本、幻覚を見るぐらい疲れているからといって、休ませてあげられないシチュエーションが多いのが、問題の根深いところだろうか。