「若鶏の死を片栗粉で包んで油葬したもの」
出典元、YouTubeのチャンネル「世界一のゆっけ」の、ポエムより。声に出して読みたい日本語。
可愛い女の子ならなにをやっても再生数を稼げると言われるYouTubeだが、さすがにここまで人が増え過ぎてしまうと生半可な事では人気は出ない。なにせ元からファンを持っている、芸人、アイドル、声優が参入しまくっている世界である。「世界一のゆっけ」は酒村ゆっけという女の子がやっているチャンネルで、”ネオ無職”と言っているので一般人なのだろう。”無職”なので勤めてはいないのだろうが、このYouTubeでお金は稼げているので、”ネオ無職”と言うかYouTuber(ユーチューバー)という事でいいと思われる。そして無職生活を満喫するべく飲み食いしまくっている「世界一のゆっけ」の大きな特徴は、まさかの”ポエム”である。
YouTubeの動画の種類はいくつかパターンがあり、大きな分類としては字幕のありなしと読み上げのありなしがある。字幕を付けるか付けないか、付けたら読み上げるか読み上げないか、そこで大きく動画の方向性が違ってきて、これは案外視聴者層にも影響を与える部分だったりする。字幕は、いわゆるテレビテロップ問題でもあり、お笑い番組でも好みの分かれる議題だが、おおよそ”あって悪いものではない”ものとして結論付けられているだろう。大は小を兼ねる的な意味として、あるならないよりは良い。と言うか、ないと寂しい。そしてそのインフレの考え方で言うと、YouTubeの動画に関しても字幕を付けた上で読み上げるのが最高のユーザビリティと言えるのかもしれない。読み上げは「ながら見」にとても親和性が高く、がっつり時間を取って見る層以外にも見てもらえるからである。
その上で。そこにさらにもう一手、読み上げる内容がただの実況や解説ではなく、ひと回り外側からくっさいポエムで読み上げるというのが、「世界一のゆっけ」のクセの強い特徴である。詩文なので、これはある意味創作活動である。インフレ理論によれば、可愛い女の子が飲み食いをしていて、字幕を付け、読み上げつつ、その内容がポエム調だというのだからとんでもない。そしてそのポエムが、クセが強いだけでなくクセになるのだから困った話である。どんなものかと言うと、「世界一のゆっけ」において鶏の唐揚げはこう表現される。
「若鶏の死を片栗粉で包んで油葬したもの」
お、おう……。
油葬って!? 独自の世界観んん……。いや食肉というものは大抵死んでいるし、火葬、土葬、水葬も存在するが、油葬はないぞ? が、まあ……、言いたい事は分かる。分かるが、表現の仕方がホント独特。これがポエムか。これが作家性か。鶏の唐揚げの、ここにしかないこんな、言ってしまえばキャッチフレーズが、なんだかちょっと声に出して読みたい格好良さを持っているのだから意味が分からない。どういう考え方をすればこんな呼び方になるか分からない。が……、こういう人がたまにいるから、ネットは面白いんだろうなっ。