「いやいるに決まってんじゃん馬鹿かごめん言い過ぎた」
出典元、パンクブーブーの漫才「命乞い」より。ボケ担当、佐藤哲夫のセリフ。
何かの大会で優勝していたかと思うが、パンクブーブーは二人とも芸能人オーラが出ていないという意味でキャラが立っていなく、テクニックで勝負している印象があり凄い物を感じる。本格派漫才コンビとでも言おうか。褒めてはいないが、本人たちも見た目は自虐してるしまあ、許してくれるだろう。その替わりテクニックが凄い。
初めて見たときはボケ担当の佐藤哲夫が、先日あったエピソードをひたすら語りつつ、言ったとみせかけて言ってない、やったとみせかけてやってない、というとんでもないボケ方をしていて衝撃を受けたものである。これ漫才テンプレートの一つの発明じゃないか、と思ったぐらいだ。このパターンにはめ込めばいくらでもネタ作れるじゃん、ずるい、けど凄い、と思った。しかしそれも、ボケ担当の佐藤哲夫とつっこみ担当の黒瀬純の息があってこその技である。佐藤哲夫の技は職人芸と言ってもいいのではないか。歯並びは悪いが技術はとても素晴らしい。黒瀬純はローソンの店員みたいな格好をしてるけどつっこみが上手い。間の取り方が上手い、と言った方がいいか。
今回のセリフは漫才「命乞い」より。厳密には以下の流れだった。
黒瀬純「命乞いの才能なんていらないだろ」
佐藤哲夫「いやいるに決まってんじゃん馬鹿かごめん言い過ぎたあのさ」
黒瀬純「あ、反省早いなおい、くやしいわなんか今」
まさに流れるような罵倒と謝罪だった。
早すぎて視聴者の認識が追いつかない、話の流れに気付いた時には既に和解が成立しているという、なんだかとんでもないものが通り過ぎていったような感覚だった。あとから気付いて笑いが来るタイプの、観客に気付かれないと失敗扱いになる、高等テクニックである。二人の間、”ま”が完璧だったからこそ実現したもので、黒瀬の驚きやつっこみが少しでも遅れたなら上手く成立しなかっただろう。漫才をそんなに分析するのも粋ではないのだが、これだけ上手いと思わず解析してしまう。
パンクブーブーの漫才を全部観ている訳ではないので分からないが、これも定番ネタとして色々な漫才で使っていけるのではないか。これもまた発明だと思う。これだけお笑い芸人がいて漫才をやる人間が増えた今、一つの思い付きはあちこちで生まれているだろう。が、それを完璧に演じ切り笑いに繋げる技術力のある芸人が、少ない。そういった中で、技術のある人が上手いネタを上手く料理してくれるのはありがたく、素晴らしい。