言の葉の魔力

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漫画

「わかったか? この一瞬おまえの権力は無力だ この場の権力は これだ」

投稿日:2017年12月29日


「わかったか? この一瞬おまえの権力は無力だ この場の権力は これだ」

出典元、作:柴田ヨクサル、画:蒼木雅彦の漫画「プリマックス」#94(94話)より。80年代アイドル蒲池奈保子(かまちなおこ)のセリフ。”これ”とは拳の事である。

「プリマックス」は、”カワイイ”をテーマにした漫画である。主人公の内森モン太は1話早々にツチノコをゲットし、1億円をゲットする。そして幼なじみの岬ツバメと篠原竹雄に100万円ずつ渡して、学園祭で女装してダンスをやろうと持ちかける。ちなみに最初はダンスの事だけ言っていたが、100万円でダンスするだけなら、と思っていた二人に”女装して”の条件を加えたところひるんだため、もう100万円つかませて女装させている。

序盤はまさにジェットコースター的展開で、学園祭ライブを成功させ、徐々に女装ダンスというか”カワイイ”に目覚めていく3人、プロデュースしてやろうと寄って来るワルコ、ライバル的存在として登場するアイサキアオと、勢いのあるしっちゃかめっちゃかな楽しさを魅せてくれた。読者は連載当初から「ヨクサルみたいなノリだな」、「言葉回しがヨクサルすぎる」、「ヨクサルの元アシが描いてんの?」と、絵柄が全然違うにも関わらず柴田ヨクサルを感じ取っていた。「エアマスター」、「ハチワンダイバー」で名を馳せた柴田ヨクサルという漫画家は、そういう独特の感性を持った漫画家なのである。しかしもちろんそれは、しっかり「作」のところを見ていない読者の感想である。元から原作は柴田ヨクサルなのである。知らずに感じ取っていたのなら、それほど作品が柴田ヨクサルのノリ全開だったという事だ。

中盤、アイサキアオ特訓回やメンバー追加、篠原竹雄と岬ツグミのラブコメなどがありどこへ行くのか分からない展開になったが、そこで登場して来たのが80年代アイドル、蒲池奈保子である。蒲池は80年代アイドルで現在48歳、かつて100万枚売れた曲を出したアイドルだったが、その後色々あって芸能界に居られなくなり、しかしそれからずっと復帰を目指し、歌唱力と共に体を鍛え続けているという何だかすごい設定のキャラクターである。歌い出すと、見ている人に蒲池の若い頃の容姿を見せてしまうという特技を持つ。

最終盤、強力な資産とカリスマ性を持つアイドルグループ「お嬢」が登場、彼女らの主催する「アイドル大戦」という対決ライブ企画が開かれる。多数のアイドルが登録し、勝ち残ったアイドルにライブをやらせようという趣向だ。「お嬢」のリーダーはワルコの腹違いの姉、時置空子である。プリマックスも参加するが、しかし空子は単純にライブを企画する訳ではなく、アイドルがステージに立った瞬間にスクリーンにそのアイドルのスキャンダルを出して、見世物にしようというものだった。トップアイドルであった「クレッセントムーン」がステージに立つと、スクリーンにメンバーが男といちゃいちゃしているシーンが流され、ライブ会場が凍り付き、ライブどころでは無くなった。アイドルとしても終わりである。他のグループも挑戦したがモザイクの掛かるほどのスキャンダルでとてもライブは出来なかった。プリマックスが出たら当然、男だとバラされるだろう。

そこへ現れたのが蒲池奈保子である。警備の者を倒しステージに上がり、80年代アイドルのパワーを見せつけて一度は会場を沸かせる。しかし勝手な事をされて納得のいかない空子から、一億砲を2発浴びて黙らせられてしまう。そして、ここまでか、というところでプリマックスがライブを敢行しようとする。が、スキャンダルはもちろん出され、プリマックスは男だという事が分かり会場が冷え切ってしまう。いきなりか……。札束から立ち上がった蒲池から檄が入る。

「あーバカ!!! 始めちゃえよ」

「チンコのあるない程度だろ」

そしてプリマックスはライブを始めるのである。再び邪魔をしようとする時子。最強のパワードスーツをまとった護衛が登場し、女装男子であるプリマックスのカツラと服をはぎとらせるよう命じる。それを食い止めるべくワルコ、「少女モンスター」の3人、アイサキアオ、「クレッセントムーン」の7人が間に入る。最後にパワードスーツを破壊したのは蒲池である。蒲池は倒れたパワードスーツの護衛を引きずって空子のところへ行き、空子をぶん殴るのである。

「わかったか? この一瞬おまえの権力は無力だ この場の権力は これだ」

”これ”とは拳の事である。もう空子を守る者は居ない。腕力で排除しようとしたところ、腕力で排除されたのである。

ここからはしっちゃかめっちゃか、波乱のクライマックスである。主人公たちを含め主要キャラがいい活躍を見せたが、やや蒲池が突出してしまったかもしれない。48歳の元アイドルがである。この設定はなかなかあるものではない。蒲池奈保子。痛快、爽快、豪快なキャラクターだった。まさにヨクサル節全開である。

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