言の葉の魔力

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漫画

「あいつを… あのエキストラを外してくれ…! たった一人のエキストラに シーンごと喰われちまう!!」

投稿日:2019年4月1日

「あいつを… あのエキストラを外してくれ…! たった一人のエキストラに シーンごと喰われちまう!!」

出典元、原作:マツキタツヤ、漫画:宇佐崎しろの漫画「アクタージュ act-age」1巻より。時代劇を撮影する監督のセリフ。

「アクタージュ」は、役者を題材とした漫画である。週刊少年ジャンプで連載されており、こういう変わった題材の漫画が人気を博し、連載を続けているのは凄い事である。また、女主人公というのも少年ジャンプでは難しいと言われているのだが、まあひとえに原作のマツキタツヤ氏、作画の宇佐崎しろ氏の力量によるものだろう。……ふたえに?

今回のセリフはscene.4、第4話からのものである。しかし3話と4話が場面としては続いているのでそのひと区切りとして見てみたい。……ここの展開が凄い。主人公の夜凪景(よなぎ けい)は、メソッド演技と呼ばれる”迫真の演技”を独学で極めている。しかしそれは役に完全に入り込む、なりきってしまう技術のため、台本すら無視して体が勝手に動いてしまう。これでは役者として問題が多過ぎである。夜凪を見い出した黒山は、まずその欠点を夜凪に自覚してもらうためにエキストラの仕事を持って来る。時代劇で、大名行列を横切ってしまった少女が斬られるところに居合わせ、見守るしかないその他大勢のうちの一人の役である。

結果としては一回目、思わず体が動いてしまい侍役の人に跳び蹴りをかましてしまう、二回目、やっぱり飛び出してしまい少女をかばいに入る、三回目、台本通り踏み留まる、となる。結果を書いてしまえばこのままである。が、周りの人たちの反応がそれぞれ面白い。

一回目、テスト1、跳び蹴りをかましてしまう。カットでNG。もちろん侍役の俳優、高田は激おこである。周りの人たちも当然、ドン引きとなる。しかしここで監督が、夜凪の迫真過ぎる演技を気に掛ける。もう一度見てみたいと思い、高田を説得する。また、斬られる役の少女も、夜凪が本気で自分を助けようとした事を感じ、助け船を出す。このおかげでただのエキストラである夜凪は外されずに、二回目にも参加する事になる。

二回目、テスト2、やはり飛び出してしまい少女をかばいに入る。カットでNG。周りのスタッフはいい加減にしろと監督に夜凪を外すよう説得する。そこに疑問を呈すのが一回目で怒った高田である。高田も斬られる少女と同様に、夜凪がふざけているのではない事を察し、違和感を覚えたのだ。監督は実在する名優の名を挙げ、役に没入する余り名演技を残す役者がいると説明する。だからと言って良い訳ではないが……。

そして三回目、これを本番にしてしまうと監督は決める。周りのスタッフやエキストラは、夜凪がなぜ外されないのかざわざわしつつの、本番である。そして夜凪は三回目にして飛び出さず、その場に踏み留まる。やっと台本通り、撮影成功と言いたいところだが、そうは行かなかった。夜凪は”迫真の演技”で少女が斬られるところを見守っていたのである。握りこぶしから血が垂れるのは漫画的演出かと思うが、とにかく少女を見殺しにする悔しさをエキストラの一人が”迫真の演技”で演じてしまったのである。これでは主役に行くはずの目が、ただのエキストラに向いてしまう。そこで監督は叫ぶのである。

「あいつを… あのエキストラを外してくれ…! たった一人のエキストラに シーンごと喰われちまう!!」

そして遂に監督は夜凪を外す決断を下す。結果的に夜凪は三連続でNGシーンを出してしまい、降板させられる訳だが、夜凪の欠点を自覚させるために連れてきた黒山と、実際に欠点を自覚した夜凪としては収穫のある撮影だった。そしてこの流れで夜凪の異常性や凄さに気付いた人たちがいて、しかし最後にはOKなはずのシーンをそれまでかばっていた監督自らがNGにして外させるという、意外性とインパクト、バッドエンドとハッピーエンドを併せ持つ緩急に優れた展開だった。……ついでに言うとギャグも随所に散りばめられていて漫画として非常に上手い。







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